返済が厳しい場合の対処法
当初の予定どおりに毎月きちんと返済できていればよいのですが、会社経営は必ずしも順風満帆にいくわけではありません。
景況の悪化など、取り巻く環境が変わることで経営状況が変わり、当初の計画どおりに返済ができなくなることはよくあることです。
資金ショートして返済ができなくなる前に、はやめに以下のリスケジュール等の対策を練るとよいでしょう。
リスケジュールとは
リスケジュールとは、返済が困難になった時に、金融機関に借入条件の変更(減額)をしてもらうことです。
具体的には、月々10万円の返済をしていたけれども、「月々5万円の返済にしてほしい」とか、「返済を6ヶ月待ってほしい(据え置きしてほしい)」とかいったことになります。
ただし、借入期間は長くなりますので、利息はその分多く支払うことになります。
リスケジュールをすると、自社の格付けは下がり、当面の新規融資は困難になります。
しかし、リスケジュールしても正常に返済ができるようになるまで回復できれば、業績回復後は新規融資も出来ると思います。
リスケジュール(条件変更)はどのようにするのですか?
まずは、リスケジュール(条件変更)した後の返済計画と事業計画を書面にする必要があります。
経営改善計画書ともいいます。
その際は、不動産などの保有財産の処分などが可能な場合は、自分も痛みを伴い努力してますよということを説明していくとよいでしょう。
例えば、
POINT1.資産の処分
資産がある場合は、まずはそれらの処分(不動産やゴルフ会員権、高級車などの売却、無駄な生命保険の解約など)を考えてみましょう。
これらの資産を手元に残しておきたいと思っても、それらがあると金融機関はリスケジュールの交渉に応じてくれないと思います。
POINT2.経費の削減
無駄な経費を見直しを行い、削減できるものについては削減します。
まずは、役員報酬のカットを行い、次に人件費などの引き下げなども検討してみましょう。
POINT3.売掛金等の回収強化
回収されていない売掛金等があれば、それを回収する努力をしましょう。
リスケジュールによって、返済条件が一時的に緩和されても、そのことに安心するのではなく、リスケジュールをしている間に企業の体力を回復させておく必要があります。経費削減はもちろんのことですが、本来の売上を上げるための経営努力をすることが肝要です。
売上が本来の姿に戻らないと結局はまた返済不能に陥ってしまうのです。
リスケジュール(条件変更)に必要な書類等の準備
返済可能額の把握
まずは、月々いくらまでなら返済できるのかを検討します。
返済可能額は、基本的に減価償却費+当期利益ですから、 この合計額を月々で割ったものが返済可能額の基礎となります。
個人事業の場合は、事業の借入とは別に、教育ローン、住宅ローンについても考慮しておく必要があります。
これなら、返していけるという根拠がないと、事業計画書、資金繰り表を作っても無意味です。
事業計画書の作成
リスケジュールをしたことにより、今後業況が回復していくような事業計画書を作ります。
リスケジュールしたことで、資金繰りがうまくいくようになり、売上が向上するなど事業が上向きになっていかないとリスケジュールをしても意味がないと判断されてしまいます。
現在の自社の状況をよく見極め、実態にあった事業計画書を立てることが必要です。
達成可能性が低いのにバラ色の事業計画書を立てるのは、問題を先送りするだけで傷口をより深くすることにつながります。
リスケジュール後の延滞や減額の申し出は金融機関の信用を落とすだけではなく、リスケジュールを打ち切られることもありえます。
なお、業績推移については厳しめで見積もりをしてください。また、売上などの数字的な根拠は金融機関に対して明確にあらわせるようにしたほうがよいでしょう。
資金繰り表の作成
作成した事業計画書に基づき、資金繰り表を作成します。
資金繰り表を作成した上で、リスケジュールをしても返済が不可能であれば、事業を清算することも視野にいれないといけません。
また、リスケジュール中にも、設備投資などの必要があったり、運転資金の需要があったりしますので、その分は考慮に入れて作成するようにしましょう。
複数の銀行から借入がある場合は、それぞれの銀行とリスケジュールの交渉をしていかなければなりません。
この場合は、メインバンク(取引や借入残高が一番多い金融機関)を中心に交渉をしていくべきでしょう。
リスケジュールに対する金融機関の考え方
さて、そのリスケジュール(条件変更)ですが、複数の借入がある場合、それぞれの金融機関に申し出る必要があるのですが、なかなか交渉がうまくいかないのが実情です。
その主な理由は以下の通りです。
- 民間金融機関は、条件変更を受け入れると、その企業のランクを引き下げなければならず、引き下げるとそれに見合う引当金を積み増さなければならなくなるため。
引当金の増額は利益の減少・自己資本率の低下につながり、金融機関としては評価が低下することを嫌がります。 - リスケジュールに応じて月々の支払額を削減したとしても、元々返済財源が少ない場合、資金不足になることに変わりがないと判断する場合もあるため。
- 金融機関が条件変更に応じるについては、引当金の積み増しなどの“痛み”を伴うのに、借り主に自分の身を切るような改善策(役員報酬の減額、不動産等の資産売却など)が見られないため。
- 他の金融機関の動きが分からず、自分のところだけがリスケジュールを要求されているのではないかという不信感があるため。
金融機関は、まずメインバンクの出方を気にするようです。
金融機関としては自分の銀行だけ条件変更になって、他の金融機関が手を引いている可能性もありますので、他の金融機関、特にメインバンクの出方は気にするところです。
ですから、まずメインバンクに相談されることをおすすめします。
メインバンクの定義はいろいろあるかと思いますが、基本的に融資残高が一番大きいところと考えてよいでしょう。
日本政策金融公庫がメインバンクの場合、リスケジュールに応じてくれる可能性は大だと思います。
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関ですので、リスケジュールにも比較的柔軟に対応してくれます。
日本政策金融公庫を含め、複数の銀行から借入を行っている場合、借入残高のシェアにもよりますが、まずは、日本政策金融公庫にリスケジュールをしてもらい、その後他の民間金融機関とも交渉していくということもよいかもしれません。
リスケがダメだった場合の対処法
すべての金融機関から、リスケジュールを断られてもまだあきらめないでください。
全国の商工会議所や商工会を通じて、専門家を紹介してもらうこともできます。